ネコなんかじゃなく、、、あたし。
天国にいると思われる、父上殿。
二十歳そこそこのあなたの可愛い娘が、久しぶりに帰省してきたあの暑い夏の日の朝。
あなたが驚いたのは無理もありません。
娘が、障子もガラス戸も開け放ち、両足を縁側に投げ出して寝ているのを発見したら。
しかも、娘のおみ足が、見たこともない(いえ、見たことはあるはず)物体で汚れており、
ほんわかと悪臭を放っていたら。
あなたの愛を、期待を一身に受け育ってきたあたしは、
前の晩の、あたしに起こった出来事を瞬時に思い出し、ものすごいスピードで理解し、
ごくごく自然を装って、
「なんかさぁ、ネコ泣いてたよ。夜中。うるさかったもん。
ほら、あたし飲んで帰ってきたじゃん、
暑くてさー、寝ぼけて戸も開けちゃったんだよ、多分ー」
「あー、なんかくさいー。なにこれー、もー、やだー。
ネコのうんこ踏んじゃったのかなー。足洗わなきゃ、歩けないじゃんー」
前の晩、あたしに起こった出来事。
酔っ払って帰ってきたあたしは、帰省中の臨時の「あたしの部屋」=仏壇の部屋に
倒れこみ、そのままぐっすり。。。
ところが、夏の暑さにかまけて、水割りを水のように飲んだせいか、
途中でお腹が痛くなり、あわてて起き上がって、トイレにかけこんだ。
実家のトイレは、ドアを開けて洋式の便器が待っているはずなのに、
何故かその夜のトイレのドアは、ドアでなく、「引き戸」。
なかなか開かなくて(だって、ガラス戸には当然カギがかかっているもの)
ようやく開けて、ほっとして・・・・・。
・・・・・・・全てが終わったのだ。
嫁入り前の、若い、あなたの可愛い娘が、いくら酒に酔ってたとはいえ、
真実を知らせるのは、相当な親不孝と思って・・・ネコのせいにしたの。
いつか、何年かしたら、飲んでる席で謝ろう!って思ってたの。
でも・・・・。あなたは真実を知らないまま、亡くなってしまったの。
つーか、分かってた?よね?
ごめんなさい。ホントにごめんなさい。
お酒の醜態は、一番の失敗は、いまだこの事件です、お父さん。
今だったら、そんな懺悔だけでなく、たっくさん話を肴に飲めるのに。
一緒にお酒、飲みたいなぁ。
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